「錦秋喜劇特別公演」
「祇園物語「大阪ぎらい物語」
2023年10月3日~29日  南座

上方喜劇を象徴する藤山直美、上方歌舞伎を象徴する成駒屋を牽引する中村鴈治郎、中村扇雀らが出演する豪華な二本立て。どちらも舘直志(二代目・渋谷天外のペンネーム)の作品。いつもの暮らしのなかで、だんだん話されなくなり、聞かれなくなった関西弁のやりとりが全編にわたって展開されて、心地よい。

「祇園小唄」
扇雀が演じるのは、舞妓に入れあげる薬問屋の跡取り息子。店の金を使い大判振る舞いをするのは、どうしようもなくいらだちさえ感じるはずなのだが…。誰かれなく気遣う様子に優しい性格がうかがえ、憎めないキャラクター。それを諫めようと乗り込んできた鴈治郎が扮する叔父、姉も同様で、舞妓の気持ちを確認するために、奇策を思いつく。この場面、くしくも2人の歌舞伎役者と姉を演じる前進座出身の瀬川菊之丞との〝共演〟となった。また、男女が「ある薬」を使って愛を確かめるという設定は、「ロミオとジュリエット」とのオマージュ?という深読みも。
興味深いのは、予想していた大団円とはちょっと違う結末。ちょっと展開が早すぎるが、世の中、そううまくはいかない、とある意味では溜飲の下がる〝辛口の人情劇〟でもあった。

「大阪ぎらい物語」
藤山直美が父・藤山寛美の当たり役を女性に置き換えた作品で、松竹新喜劇の演目でありながらも、いまでは直美自身の代表作にもなっている。おそらく時代、昭和中ごろの船場の木綿問屋が舞台。直美が扮するそこの娘が使用人との結婚を願うが反対され、「車引き」になると困らせる。親子関係や店での上下関係はいまでは通用しにくいいが、登場人物の庶民的な言動もあって、古き良き?時代の話として楽しむことができる。
母親(大津嶺子)、叔父(田村亮)に、ある意味で「脅迫」をして、いろいろな事を承諾させていく様子が、絶妙な間合いで展開。1つ解決しては、また次の要求をするという、喜劇の常道、ルーティーンで笑いを増幅させていくのは、見事。ただし、今回はいつもより長尺になっていることもあって、後半はやや「説教」「人生訓」が色濃くですぎたような気もした。
冒頭、店の女性たちが忙しく「おむすび」を作る場面が登場する。ちょっと違和感を感じたのは、それが「三角おにぎり」だということ。いまでは、コンビニなですっかり定着しているが、大阪生まれの私は幼い頃から、ずっとしか食べたことがなかった記憶がある。やはり、ここは「俵おにぎり」ではないか?
観劇した数日後、それを確かめるために、関西の演芸ついて資料や映像などを
収蔵ている「上方演芸資料館」(ワッハ上方)で、藤山寛美が演じた同名の松竹新喜劇公演(1983年、新橋演舞場)DVDをチェックした。結果は…。ここでも、店員たちは「三角おにぎり」を握っていた。そうなのかなあ? いずれにしても、こういったディテールの積み重ねが時代感や空気感を生み出すものだと思う契機にはなった。

〈あらすじ〉
「祇園小唄」=京の薬問屋「竹田屋」の本家の跡取り息子・利兵衛は舞妓清香と恋仲で、仕事はそっちのけでお茶屋で遊びほうけています。
心配した竹田屋分家の若旦那・卯三郎は、利兵衛を迎えに茶屋まで行きますが、根は遊び好きの卯三郎は酒を勧められてしまい……
「大阪ぎらい物語」=主人亡き後、大阪・船場で老舗の木綿問屋を営むおしずが気がかりなのは二人の子どものこと。弱気な長男・新太郎と、異母姉妹のおとみに比べ、優しいけれどちょっと変わった妹・千代子。店の手代との身分違いの結婚を望み、おしずと後見人の叔父・忠平は猛反対。果たして千代子の恋の行方は?

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