「オペレーション・フォーチュン」

公開日  2023年10月13日

「コードネームU.N.C.L.E」のガイ・リッチー監督・脚本のスパイ映画。敏腕エージェント、オーソン・フォーチュン(ジェイソン・ステイサム)が英国諜報局MI6の命を受け、武器商人グレッグ・シモンズの陰謀に切り込む。
スパイ映画と言うと、昨今「ミッション:インポッシブル」シリーズと比べられてしまうことは避けられない。その点、本作は「ミッション:インポッシブル」ほど大規模ではないものの、アクションが描けているしコメデイ作品としても見応え十分。ローワン・アトキンソンの「ジョニー・イングリッシュ」シリーズに代表されるパロディ路線のスパイ映画とも又、違った側面を持っている。
ガイ・リッチー監督のシナリオは、主人公の性格に決定的な違いを出している。「ミッション:インポッシブル」のイーサン・ハントが仕事に一途でストイックなのに比べて、オーソン・フォーチュンは、仕事は仕事できっちりこなすが、政府の仕事であろうと、人類の危機であろうと、自分の命と引き換えにはしない。余暇や趣味を大切にしているところは、現代的な価値観を持つ人物で、「007」シリーズのジェームズ・ボンドのような女性絡みの要素も無い。
つまりこの映画は、当たり前に職人的な仕事をこなし、休暇をきちんととるイギリス人を描いた映画と見ることが出来るのだ。そもそも、スパイという裏の仕事を表舞台に上げて、エンタテインメントにすることの魅力は、どんな風に人物造形をしてもよいところなのではないか。イーサン・ハントがまとうクール、ジェームズ・ボンドがまとうクールはどちらも独創性に富んでいてマネが出来ないものばかりだ。
オーソン・フォーチュンのクールは、労働条件を整えてスパイ活動をする、というクールで、言い換えればその人物の暮らし方であり、単なる身勝手とは違う。MI6がスパイの民間委託に力を入れれば、中には1人ぐらいこういう人物も居るだろう。現実の世界では、組織の上意下達に従順なことが求められるが、それがもたらす弊害を冷静に見極め、はっきりと拒否出来る思考を持とうではないか。そのためにはまず、〝わがまま〟を言うことから始めよう。「ジェントルメン」、「キャッシュトラック」、ガイ・リッチー監督のプロテストは、プロテストに見えないところがクールである。

(2023年/イギリス・アメリカ/114分)

配給 キノフィルムズ
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