「高野豆腐店の春」
2023年8月18日公開
「高野豆腐店」(こうやとうふてん)ではなく、広島・尾道に〉尾道の下町に店を構える、高野辰雄(藤竜也)という頑固な職人が営む「高野豆腐店」(たかのとうふてん)の物語。登場するのは、ほとんどが善人たち。なかでも、辰雄の娘・春(麻生久美子)の見合い相手探しに奔走する同じ商店街の住民たち。いまの時代、余計なお節介?とスレスレでもあるが、こんな人たちが周りにいたらいいなと、厚い人情に、うれしくなってくる。
派手なアクションもないし、ことさらドラマチックな展開もない。辰雄と春との微妙な関係、それぞれの心ときめく出会いに見入ってしまう。例えば、辰雄も同席した春とお見合い相手(小林且弥)との食事会。かっこいいイタリアンシェフが〝未来の息子〟になると信じ切った辰男はワインをぐい飲み!それが、春が道夫(桂やまと)と付き合っていると知り、その食事会では日本酒でヤケ酒?この対照的なシーンに、辰雄という人物の率直な心情、おかしさ、哀しさが伝わってくる。一方、辰雄自らも、ふみえ(中村久美)で出会い、愚直ながら病気の彼女をフォローする。そうした出来事があって、辰雄と春が互いの気持ちをぶつけ合うシーンは、観ている側も自分に照らしあわせて、〝温かい〟気持ちになってくる。
〈あらすじ〉平成が終わる頃の物語。辰雄と娘の春が、こだわりの大豆からおいしい豆腐を二人三脚で作っている。心臓の具合が良くないことを医師に告げられた辰雄は、春のことを心配して、理髪店の繁(徳井優)、定食屋の一歩(菅原大吉)、タクシー運転手の健介(山田雅人)、英語講師の寛太(日向丈)の協力で、お見合い作戦を企てる。イタリアンシェフ(小林且弥)との結婚が成功したようにみえたが、実は、春には交際している人がすでにいた。相手は、高野豆腐店の納品先、駅ナカのスーパーで働く道夫(桂やまと)。納得のいかない辰雄は春と口論になり、春は家を出ていってしまう。そんななか、偶然が重なり言葉をかわすようになった、ふみえが豆腐店を訪ねてくる…。
監督・脚本 三原光尋
2023年製作/120分/G/日本 配給:東京テアトル