「青」に魅せられる「春」
2023年5月26日公開
近年、「発達障害」という言葉をよく耳にする。これまでは「他人とはちょっと違うところがある人」という表現をされがちだったが、他人とのコミュニケーション能力やあることへの執着といったものが顕著にみられる症状。ただし、違う視点からすると、人並みはずれた才能が開花することもある。
この映画の主人公・屋内透(宮沢氷魚)は青色の絵しか描かないと注目されている画家。彼を担当することになった出版社の雑誌編集者・小向春(小西桜子)が、いつしか彼のピュアな感性に惹かれていく様子を、淡々としたタッチで描かれていく。こういった役柄は、ときとして誇張気味に演じてしまいがちだろうが、宮沢はそうではなく、ほんの少しだけ個性的というキャラクターになりきっていて、無理がない。
春には一緒に暮らす恋人(細田善彦)がいる。2人の生活ぶりは比較的豊かで、表立っては問題がないのだが、そうしたなかに、何か物足りないものを感じていた春には、屋内との交流はとても新鮮だった。そういうこともあって、春は会社の年下の男性が、好意的に屋内のことを「あの人変わっているなあ」と何度か言うのに抵抗感を抱くようになっていく。そして、2人は愛を感じるようになるのだが…。恋が成就したというよりも、むしろすがすがしい結末がいい。
監督は、出版社で漫画編集者として働く葛里華(かつ・りか)で、初のオリジナル長編作品。
【ストーリー】出版社で雑誌編集者として働く小向春(小西桜子)は、仕事も恋もうまくいかない日々を送っていた。ある日、春は取材で、「青い絵しか描かない」ことで有名な画家・屋内透(宮沢氷魚)と出会う。思ったことをストレートに口にして感情を隠すことなく嘘がつけない屋内に、戸惑いながらも惹かれていく。