「パリタクシー」
2023年4月7日公開

観終わった後で、まず思ったのは「これは舞台にできる」ということ。この映画では、エッフェル塔やシャンゼリゼ大通りといった名所をはじめ、パリの街が登場するが、基本的にはタクシードライバーのシャルル(ダニー・ブーン)と乗客のマドレーヌ(リーヌ・ルノー)という2人の「会話劇」。最初は、92歳のマドレーヌわがままにうんざりしていたシャルルだが、車中でいろいろ話すうちに、しだいに打ち解けていく…。
かつて、「ドライビング・Missデイジー」(1989年)という映画があった。
ユダヤ系未亡人の老女とその運転手であるアフリカ系男性との交流を描いた物語で、それに通じるヒューマンドラマに感動する。その映画はもともと舞台劇だったのを映画化したものだが、その逆パターンもあり!だと思ったのだ。マドレーヌを演じているリーヌ・ルノーという女優は撮影当時94歳でぼぼ設定どおり。かつては、ムーランルージュなどのレビューで歌っていたというキャリアがあり、たたずまいやちょっとしたしぐさがエレガンス。日本でやるなら、草笛光子、ではシャルルは誰が?と思い描くにも楽しい。
観ているほうも、シャルルと同様に、金持ちの老女が感傷的に、思いつくまま懐かしい場所をタクシーで巡る、と思っていると、そこには深い訳があり、さらに我々にも共通する「老い」の現実が突きつけられる。
大作でもなく、派手なアピールポイントもないが、さまざまな感情がわきあがってくる作品だ。
監督・脚本・プロデュサー/クリスチャン・カリオン

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA