「フェイブルマンズ」
2023年3月3日公開

アカデミー作品賞、監督賞、主演女優賞、助演男優賞、脚本賞、美術賞、作曲賞=以上、ノミネート

スティーヴン・スピルバーグ監督の「自伝的」作品。ということで、彼がなぜ映画に魅せられたのか? ユダヤ系アメリカ人としてどのように生きてきたか?の2つを軸にノスタルジックに、しかも家族の物語として描かれている。
1952年、サミー・フェイブルマンズ少年は映画を初めて見た。暗い空間に入るのを怖がっていたが、科学者の父とピアニストの母に説得されてイヤイヤ観ることになる。しかし、一気にその世界に引き込まれ、その後の運命を決めた。それは「地上最大のショウ」(1952年)。セシル・B・デミルが監督、チャールトン・ヘストンらがサーカス団を題材に描いた大作だった。ちなみに、モデルになったリングリング・ブラザーズ・アンド・バーナム・アンド・ベイリー・サーカスは、後に「グレーテスト・ショーマン」(2017年)でも描かれていて、象などの動物が登場するスペクタクルなサーカス団だった。この映画では、サミーが強烈な印象を持った「地上最大のショウ」での列車の脱線シーンが登場するが、その一方でスピルバーグ作品に共通する〝夢〟のある映画ということでも大きな影響を与えたと想像できる。また、8ミリカメラを手にしたサミーは自主映画を監督することになるが、そこで大きなインパクトを持った作品としてジョン・フォード監督、ジョン・ウェイン主演の「リバティ・バランスを射った男」(1962年)があげられる。娯楽西部劇のスタイルをとっているが、ほぼ終盤まで決闘シーンが出てこず、人間ドラマとしても評価されている作品。これもまた、娯楽映画の形をとりながらメッセージ性があるスピルバーグ作品の「原点」になったのだろう。
一方、もう1つの大きなテーマが生まれ育った家庭。「映画」1つとっても、芸術として評価する文系の母と「なぜ影が映し出されるか」を説明する理系の父を持ったことで、映画を多角的にとらえる視点が育まれていった。そんな両親は互いに認め合いながらも距離が大きくなっていく。特に母は夫の才能を認めながらも満たされないものを抱き続けていた。それを象徴するのは、車のライトを「照明」ととらえ、下着が透けるのもかまわずにダンスをするシーン。幻想的で美しい映像だが、母がかかえる不安定な情緒も感じる。さらに、ユダヤ系であるためにイジメにあう学生生活も描かれる。それを克服するツールとなったのは映画だった。このあたりはジワリ、ジワリというのではなく、結構テンポよく展開。映画によってイジメはやわらぎ、彼女までできるが「プロポーズ」するとあっさりとフラれるあたりは少し説明(描写)不足にも思えて、これは違った意味で「夢物語」?とも。ただし、撮影所にもぐり込み、ついに「あこがれの監督」にも会えるあたりもまた〝夢〟みたいな展開だが、これはいまのスピルバーグ監督の存在、活躍をみると、そんなツッコミができないほど説得力があるのだ。。
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■配給:東宝東和
■公式サイト: https://fabelmans-film.jp/
■公式twitter:https://twitter.com/fabelmans_jp

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