「銀平町シネマブルース」
2023年2月10日からシネ・リーブル梅田で公開
コロナ禍で営業が心配された映画のミニシアターを舞台にした作品が何本か続いている。一昨年、高畑充希が田舎の映画館の救世主になるタナダユキ監督の「浜の朝日の嘘つきどもと」があり、昨年は売れない映画監督が自分の作品を上映して欲しいと全国のミニシアターを行脚するリム・カーワイ監督の「あなたの微笑み」、名古屋のシネマスコーレの支配人を追いかけた「シネマスコーレを解剖する〜コロナなんかぶっ飛ばせ〜」があった。今年は城定秀夫監督の「銀平町シネマブルース」からそれは始まる。
主人公はやはりパッとしない映画監督の近藤(小出恵介)で、事情があって3年前に仕事をやめ、東京郊外の銀平町に戻って来るところから物語は始まる。生活保護を受ける説明会に寄ったところで景気の悪い映画館の支配人・梶原(吹越満)、ホームレスの佐藤(宇野祥平)に出会って、それが縁で梶原のミニシアター「スカラ座」で働くことになる。ご飯を食べなくても月2回は映画を見る佐藤の好きな映画は「カサブランカ」である。
近藤はかつて一緒に仕事をしていた助監督が自殺した事で罪の意識にさいなまれている。地元に妻と娘がいるが会いに行けない。事情を聞いて梶原が「もう一度、映画を撮れ」と檄を飛ばし、佐藤も「金はないが応援する」と励ます。アルバイトの女の子2人(藤原さくら、日高七海)や周辺の映画好きで劇場に通う人たちの応援を受け、彼は3年前に撮り終えて完成していなかった映画の再編集に取りかかる。
小出は若いころ自主映画を撮っていた経験があり当時を思い出しながら演じたと役に入り込み、吹越の支配人がいかにもそこにいそうな感じでリアル。ホームレスの宇野がこの人だからという存在感で泣かせる。舞台の映画館は埼玉県の現役劇場「川越スカラ座」。映写技師の紳士を演じた渡辺裕之(昨年5月急逝)はこれが最期の映画出演か。
ピンク映画から出たキャリアがあるいまおかしんじ監督(57)が脚本を担当し、自主映画、ピンク映画などを経て売れっ子の城定監督(47)がメガホン。背景に「映画愛」がにじんでいる。ほかに片岡礼子、浅田美代子、藤田朋子、中島歩、さとうほなみ、小野莉奈、平井亜門らが共演。
SPOTTED PRODUCTIONS配給。
写真は映画の中の小出恵介(左端)ら出演者(C)2022「銀平町シネマブルース」製作委員会