映画「ほどけそうな、息」2022年10月8日から大阪第七芸術劇場で公開

児童虐待事件などでよくマスコミに登場する児童相談所の若い女性職員を主人公にした映画「ほどけそうな、息」(マグネタイズ配給)が話題になっている。個人情報などであまり表に出ない児童福祉司の仕事を社会派の小澤雅人監督(44)がリアルに描いているが、作品の狙いなどについて本人に聞いた。
小澤監督は児童虐待をテーマにした長編映画「風切羽 かざきりは」(2013年)と、性暴力の被害を正面から描いた同「月光」(16年)の2本を発表して知られる千葉県出身の映画作家。同傾向の社会的問題をテーマに扱った短編映画も多く手がけている。「今回はよくマスコミ報道に出てくるが家族のプライバシーに関わる仕事であるため、一般の人が知る機会が限られている児童相談所で働く人たちの実態を描くことを主テーマにした」
児童相談所に入って2年目のカスミ(小野花梨)が主人公で、育児放棄ネグレクトの母親(月船さらら)とその娘、長距離運転士の夫の3人家族の間に入って苦悩する話が中心に描かれている。「僕自身が福祉司の仕事が分からず、女優の花梨さんと一緒に勉強しながらヒロインの仕事と生活を追いかけた。実際に相談所の人に教えてもらいながら命につながる問題をカスミと一緒に考えた。映画を見る観客も一緒に考えてもらいたいと願いながら…」
タイトルの「ほどけそうな」とは「難しい問題だが良い方向に」という心情が込められている。「息」とは「深呼吸」であり「生きる」という意味。ベルギーの巨匠、ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟監督の「ある子供」(05年)を見て本格的に映画を志したという。「その意味でずっとブレずに仕事ができている」と表情を緩める。「ほどけそうな、息」は44分の中編で、小澤監督の「一瞬の楽園」(18年。27分)と「まだ見ぬあなたに」(19年。30分)の短編が日替わりで同時上映される。
「一瞬の楽園」は重度のギャンブル依存症の青年(入江海斗)とベトナム人留学生の女の子(ヴー・トゥ・ザン)の出会いを描き、「まだ見ぬあなたに」は妊娠した女子高生(池田朱那)と図書館司書の女性(澁谷麻美)の交流の時間を描いた作品。次回作は「隠れキリシタンの物語で、現代で失われていく伝統文化について考えたい」。
写真は「社会的に問題があるテーマを静かに語りたい」と話す小澤雅人監督=第七芸術劇場

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