「アプローズ、アプローズ! 囚人たちの大舞台」
2022年7月29日公開
演劇に興味のある人なら、1度は観た事、聞いたことがあるかもしれない「ゴドーを待ちながら」。1950年代にサミュエル・ベケットが書いたこの戯曲は、いまも世界各地で上演され続けている。2人の男がゴドーという人物をずっと待ち続けるという内容で、正直を言って起承転結は乏しい内容。それだけに2人をはじめ、1本道をやって来て彼らと会話する人物たちを演じるのには、演技力や存在感がないと、なかなか難しい。
この映画は、囚人たちに更生教育の一環として、この芝居の登場人物を演じさせる物語。演劇という表現スタイルは、別の人物や人格になることによって自分を見つめ直すことができる手段として、犯罪者や精神的に病を持つ人たちの更生、治療手段として使われることもある。それをテーマにした映画には「マルキ・ド・サドの演出のもとにシャラントン精神病院患者によって演じられたジャン・ポール・マラーの迫害と暗殺」(1968年)がよく知られている。
個性あふれる人たちが集められ、1つのことを達成する。こういったストーリーはたびたび製作されていて、駄作もあれば洋画「フルモンティ」や邦画「ウォーター・ボーイズ」のようによくできた感動作も生まれている。それらと違うのは、この物語が、1985年にスウェーデンで実際にあった出来事をフランス、現代に置き換えて描いたもので、ある意味では〝ドキュメンタリー〟としても観ることができること。最初はイヤイヤ、抵抗をしながらやっていた人々が、だんだんと演じる場所(劇場空間)が大きくなっていき、まさしく「大舞台」で演じることになるまでのプロセス。これらは前述したように、よくできた、想像もできる筋立て。ところが…。なのである。ネタバレになるので紹介はしないが、これが感動的で、まさにスタンディングオベーション!アプローズ(拍手喝采) 映画好きだけでなく、ぜひとも演劇好きにも観てほしい作品だ。
アプローズ、アプローズ!囚人たちの大舞台 | UN TRIOMPH | reallylikefilms
日刊スポーツ新聞社文化部記者を経て、1990年に独立。 新聞や雑誌などで執筆活動を続けている。主な著書には 『宝塚BOYS』 として舞台化もされた 『男たちの宝塚』 や 『宝塚 幻のラインダンス』 『少女歌劇の光~ひとときの夢の跡』 (共著) 『河内家菊水丸 秘宝の舘大全集』ひとときの夢の跡』 (共著) 『河内家菊水丸 秘宝の舘大全集』(監修を担当)などがある。FM大阪 「おとなの文化村」 出演 (終了)、文化庁芸術祭 大衆芸能部門 (関西) 審査員を歴任。 日本映画ペンクラブ会員。 日本演劇学会会員。 なにわ名物開発研究会会員。シネマコミュニケーター講座 講師などをつとめている。