「藤山寛美三十三回忌追善 喜劇特別公演」
大阪松竹座
「喜劇王」と言われた松竹新喜劇の藤山寛美(1990年5月21日、60歳で死去)の三十三回忌を迎えた追善公演。娘の藤山直美、孫の藤山扇治郎をはじめ、現在の松竹新喜劇をけん引している三代目渋谷天外らが出演。この3人は2作品のうち1作品のみの出演で、舞台上での「共演」がなかったのは残念。今後の課題か。
「愛の設計図」は大阪万博でにぎわう大阪の工務店が舞台。たたきあげの現場監督(天外)と彼が「指導」している一級建築士の青年(扇治郎)との〝葛藤〟を描いている。「現場がわからないと一人前にならない!」と厳しく当たる監督。現場1人だけ残して帰ったり、買った本を無造作に放り投げて渡すなど、ほぼ半世紀前の作品だけに、いまでは完全に「パワハラ」だと思われる描写も。それは監督の〝優しさ〟の裏返しには違いないが、さげすむような暴言などはもう少し時代に合わせるべき。きつい言葉が続き、いたたまれない気分にもなった。心底にある愛情がさらに浮彫になれば、後半の「人情」がさらに感動的になるだろう。 「大阪ぎらい物語」は、母親と叔父に結婚を反対された船場の娘(直美)が、「車引き」になって、翻意させる喜劇。これも昭和ならではの話。反対し続ける母親と叔父に「車夫姿で近所を歩く」と脅す?様子が何度も繰り返されて、笑いが増幅していく。当意即妙の掛け合いをみせる直美はさすが!ただ、少し繰り返しがくどく、説教じみた感じもした。時代が経ち、寛美ゆかりの役者も少なくなったのは寂しい。そういった意味で、せっかく客演ている中川雅夫、曾我廼家文童に重要な役を演じてほしい気もした。
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