誰でも知っているキャラクターを主人公にしてシリーズ化する場合、広い年齢層を対象にした親しみやすいものにするか、そのキャラクターの性格、過去などを深堀していくという2つのやり方がある。近年は後者への傾向が強く、アメコミの2強、DCもマーベルも、「痛快さ」と同時にだんだんとそうなっているが、この映画「THE BATTMAN」はその究極?!とも言えるだろう。

完全無欠のヒーローを理屈抜きに勧善懲悪で描いたテレビ版「バットマン」を見ていた私としては、今回の敵として登場する「リドラー」というキャラクターも、テレビ版では「ナゾラー」と呼ばれていて、トレードマークの「?」だったのを懐かしく思い出した。その「延長戦」ともいえる映画版初期のティム・バートン監督などは、そういった意味で楽しめたのだが、だんだんとディープになっていき、クリストファー・ノーラン監督の〝ダークな世界〟の色合いが濃くなっていき、これも一生懸命についていっているのでだが。

これまでのシリーズとは大きく違っているのは、ブルース・ウェインよりもバットマンの「出番」が圧倒的に多いこと。アメコミの象徴される「覆面ヒーロー」「変身ヒーロー」の多くは、ごく普通の人物が予想もつかないほどに変身してスーパーヒーローになるというパターン。その「落差」がおもしろく、痛快な気分にさせてくれるんもだが、この映画では、そういった決まり事?も超越。黒いコスチュームを通して喜怒哀楽、ときには感情的に相手を殴り続ける「人間的」なキャラクターになっている。また、敢然と1人で事件を解決!というより、キャットウーマンやゴードン刑事というパートナーがいるのも、「スーパーヒーローもの」のイメージから、もう距離を置いている。というように、この映画は、スカッとしたアクションものを楽しむのではなく、むしろ、人間の深い心理をえぐるヒューマンドラマが好きな人にマッチしているかもしれない。「ポップコーン」を持って映画館へ、というテイストを期待している人は、くれぐれも「ご用心を」(笑い)。

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